弁理士法の概要

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 特許庁総務部秘書課弁理室 
 電話:03-3581-1101 内線2111
     



平成12年3月
通商産業省
I.法律改正の目的
 情報や知識が大きな付加価値を生み出す「知恵の時代」を迎え、我が国産業の国際競争力を強化し、中小企業等の活性化を図るためには、創造活動(技術開発)の成果である知的財産(特許等)を保護することに加え、これを積極的に活用し収益を生み出し新たな創造活動の源とする仕組み(知的創造サイクル)を構築していくことが必要。
 また、規制緩和推進3か年計画(改定)(平成11年3月30日閣議決定)において、「国民生活の利便性の向上、当該業務サービスに係る競争の活性化等の観点から、所管する業務独占資格等について、業務独占規定、資格要件、業務範囲等の資格制度の在り方を見直す」と記載されており、業務独占規定・業務範囲の見直し、法人化の解禁を含め弁理士制度の改革が早急に求められている。
 このため、知的財産の事業化や取引活動を支援する知的財産専門サービスの重要な担い手である弁理士について、規制改革による競争促進国民へのサービスの向上の観点から、その業務を規制する弁理士法(大正10年制定、カタカナ法)の全面的な見直しを行う。

II.法律の概要
1.弁理士の業務範囲の見直し
@ ユーザーニーズに対応した知的財産専門サービスの拡大
特許庁への手続代理を中心とする現行の弁理士業務を以下のように拡大。
工業所有権等に関するライセンス契約等の仲介・代理、コンサルティング業務を追加。
国際化に対応し、海賊版等不正商品の輸入について、税関への輸入差止申立て代理業務の追加
増加する知的財産関連紛争への円滑な対応のため、工業所有権仲裁センター等の専門的仲裁機関における工業所有権に関する事件の仲裁手続の代理業務を追加
仲裁手続に付随して行われる和解手続の代理業務の追加
弁理士への特許侵害訴訟の訴訟代理権については、司法制度改革審議会において検討予定。
A 弁理士の独占業務の見直し
弁理士の独占業務を一部縮減し、権利確定後の特許料納付手続等について一般に開放。
2.弁理士試験制度の改革
 弁理士人口の量的拡大を図るため、弁理士試験制度(合格率4%、合格者 平均年齢約33歳)を改革し、若く有為な人材の参入を促進する。
  試験科目に著作権法等を追加し、所要の能力担保を図るとともに、現行41科目の選択科目の大幅見直し等試験内容を簡素・合理化。
  他の有資格者への一部試験免除 等
3.総合的なサービス提供体制の実現
  総合的かつ継続的なサービスの実現、弁理士の地域展開の促進を図るため、弁理士事務所の法人化を解禁(「特許業務法人」)。特許業務法人は、士業の法人としては我が国で初めて準則主義による設立が可能。また、我が国で初めて法人として訴訟関連業務を取り扱う。
  法改正と併せて、地方支所の設置も解禁。
4.その他
  競争促進によるコスト削減、国民へのサービス向上等の観点から、弁理士の報酬額表規定を法律から削除するとともに、法改正と併せて、弁理士の広告制限の原則撤廃等の措置を行う。

III.スケジュール
   平成12年3月16日 事務次官等会議
平成12年3月17日 閣議決定
平成12年3月21日 国会提出
平成12年4月18日 国会において成立
平成12年4月26日 公布
平成13年1月 6日 施行
 (第2章(弁理士試験)は平成14年1月1日、第4条第3項(契約代理)は、公布後2年以内の政令指定日に施行。)

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(参考資料)
1.知的財産を巡るグローバル競争の激化
日米の技術貿易収支(特許権の使用許諾料等の収支)の格差は90年代に入って拡大。その背景には、米国企業の知的財産の戦略的活用に対する積極的な取組が存在。


<IBM>
   90年代に入ってガースナー会長のリーダーシップの下、知的財産の価値を最大限に高める経営戦略を展開。この結果、ライセンス料収入が90年の約1億ドルから急増して98年には11億ドルを超え、経常利益の19%を占めるに至っている。
<ルーセント・テクノロジー>
   96年にAT&Tから分離されたルーセント・テクノロジーも、11人のノーベル賞受賞者を生み出したベル研究所の技術成果である特許について、基本特許と事業化に必要な関連特許とをパッケージ化することにより、ライセンシングを推進。
 
2.米国の知的財産専門サービス・知的財産取引市場の拡大
米国では、企業の知的財産の戦略的活用をサポートするサービス(知的財産専門サービス)が特許弁護士(Patent Attorney)、弁理士、知的財産取引事業者、公認会計士、経営コンサルタント等により幅広く提供されており、また、TLO(技術移転機関)による技術移転等、知的財産取引も盛んに行われており、新規産業創出、雇用拡大に寄与。
  日米欧の知的財産権仲介移転ビジネスの現状     
日米の知的財産関係弁護士・弁理士
米国
特許弁護士:
弁理士:
約16,000人
約 4,000人
日本
弁護士(弁理士登録をしている者)
弁理士:
約 300人
約4,300人
 
3.我が国における知的財産の保護の強化
近年、我が国としても知的財産の「広く、強く、早い保護」の実現に向けた諸施策を推進(プロパテント政策)。

・権利侵害に対する救済措置(損害賠償制度)の強化【H10/11改正】
・出願審査、無効審判の迅速化
・意匠法改正【H10】、商標法改正【H11】

・特許裁判の機能強化
 東京地裁知財専門部を集中的に増設(一部→三部)
 裁判所と特許庁との連携協力強化
 (調査官の増員、情報交換制度等の創設【H11改正】)
・特許発明の権利範囲を従来より広く認める「均等論」の採用
 (H10最高裁判決)

法制度的整備はかなり進み、裁判結果において成果も出ている。
  特許侵害訴訟で過去最高の約30億円の賠償額判決
(H10東京地裁)
  iMac vs. e-one(パソコンデザインの模倣)事件で一月以内で販売差止決定(H11東京地裁)
 
4.知的財産専門サービスの充実・強化
今後は知的財産取引等の権利活用面が重要。
cf 我が国の未利用特許は約40万件(現存特許は約93万件)
TLO等による大学からの技術移転の促進、特許流通アドバイザー等による特許流通の支援施策を展開しつつあるが、今後は、弁理士をはじめとする知的財産専門サービスの充実・強化が課題となっている。

[更新日 2000.1.21]