世界貿易機関を設立するマラケシュ協定
附属書一C 知的所有権の貿易関連の側面に関する協定
加盟国は、
国際貿易にもたらされる歪み及び障害を軽減させることを希望し、並びに知的所有権の有効かつ十分な保護を促進し並びに知的所有権の行使のための措置及び手続自体が正当な貿易の障害とならないことを確保する必要性を考慮し、
このため、(a)千九百九十四年のガット及び知的所有権に関する関連国際協定又は関連条約の基本原則の適用可能性、(b)貿易関連の知的所有権の取得可能性、範囲及び使用に関する適当な基準及び原則の提供、(c)国内法制の相違を考慮した貿易関連の知的所有権の行使のための効果的かつ適当な手段の提供、(d)政府問の紛争を多数国問で防止し及び解決するための効果的かつ迅速な手続の提供並びに(e)交渉の成果への最大限の参加を目的とする経過措置に関し、新たな規則及び規律の必要性を認め、
不正商品の国際貿易に関する原則、規則及び規律の多数国間の枠組みの必要性を認め、
知的所有格が私権であることを認め、
知的所有権の保護のための国内制度における基本的な開発上及び技術上の目的その他の公の政策上の目的を認め、
後発開発途上加盟国が健全かつ存立可能な技術的基礎を創設することを可能とするために、国内における法令の実施の際の最大限の柔軟性に関するこれらの諸国の特別のニーズを認め、
貿易関連の知的所有権に係る問題に関する紛争を多数国間の手続を通じて解決することについての約束の強化を達成することにより緊張を緩和することの重要性を強調し、
世界貿易機関と世界知的所有権機関(この協定において「WIPO」という。)その他の関連国際機関との間の相互の協力関係を確立することを希望して、
ここに、次のとおり協定する。
第一部 一般規定及び基本原則
第一条(義務の性質及び範囲)
1 加盟国は、この協定を実施する。加盟国は、この協定の規定に反しないことを条件として、この協定において要求される保証よりも広範な保護を国内法令において実施することができるが、そのような義務を負わない。加盟国は、国内の法制及び法律上の慣行の範囲内でこの協定を実施するための適当な方法を決定することができる。
2 この協定の適用上、「知的所有権」とは、第二部の第一節から第七節までの規定の対象となるすべての種類の知的所有権をいう。
3 加盟国は、他の加盟国の国民に対しこの協定に規定する待遇を与える。該当する知的所有権に関しては、「他の加盟国の国民」とは、世界貿易機関のすべての加盟国が千九百六十七年のパリ条約、千九百七十一年のベルヌ条約、ローマ条約又は集積回路についての知的所有権に関する条約の締約国であるとしたならぱそれぞれの条約に規定する保護の適格性の基準を満たすこととなる自然人又は法人をいう。ローマ条約の第五条3又は第六条2の規定を用いる加盟国は、知的所有権の貿易関連の側面に関する理事会(貿易関連知的所有権理事会)に対し、これらの規定に定めるような通告を行う。