特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約に基づく規則

第11規則 試料の分譲
11.1関係工業所有権庁に対する試料の分譲国際寄託当局は、締約国又は政府間工業所有権機関の工業所有権庁の請求があつたときは、次のことを内容とする宣言が行われることを条件として、当該工業所有権庁に対し、寄託された微生物の試料を分譲する。
(@)
 特許を求める出願で当該微生物の寄託に係るものが当該工業所有権庁にされており、かつ、当該出願の対象が当該微生物又は当該微生物の利用に係るものであること。
(A)
 当該出願が当該工業所有権庁に係属していること又は当該出願について特許が与えられたこと。
(B)
 当該締約国又は政府間工業所有権機関若しくはその構成国において採用されている特許手続上試料を入手する必要があること。
(C)
 試料及び試料に関連する情報を(B)に規定する特許手続のためにのみ使用すること。
11.2寄託者に対する試料の分譲又は寄託者の承諾を得た試料の分譲
 国際寄託当局は、次の者に対し、寄託された微生物の試料を分譲する。
(@)
 請求を行つた寄託者
(A)
 請求を行い、かつ、試料の分譲を承諾する旨の寄託者の宣言書を提出した当局、自然人又は法人(以下「承諾を得た当事者」という。)
11.3試料の分譲について法令上の資格を有する当事者に対する試料の分譲
(a) 国際寄託当局は、当局、自然人又は法人の請求があつたときは、総会によつてその内容が定められた様式により請求がされること及び工業所有権庁が当該様式により次のことを証明することを条件として、当該請求を行つた当局、自然人又は法人(以下「証明された当事者」という。)に対し、寄託された微生物の試料を分譲する。
(@)
 特許を求める出願で当該微生物の寄託に係るものが当該工業所有権庁にされており、かつ、当該出願の対象が当該微生物又は当該微生物の利用に係るものであること。
(A)
 当該工業所有権庁が特許手続上の公表を行つたこと。((B)ただし書の規定が適用される場合には、その公表についての証明をする必要はない。)
(B)
 当該工業所有権庁に係る特許手続を定める法令上、証明された当事者が当該微生物の試料の分譲を受ける権利を有していること及び、当該法令が一定の条件の下でその権利を認めている場合には、これらの条件が現実に満たされたことを当該工業所有権庁が認めること、又は証明された当事者が当該工業所有権庁の所定の様式による文書に署名を行つたこと及び、そのことにより、当該工業所有権庁に係る特許手続を定める法令上、証明された当事者に対する試料の分譲のための条件が満たされたものとみなされること。ただし、当該工業所有権庁に係る特許手続を定める法令上、証明された当事者が当該工業所有権庁による特許手続上の公表の前に当該微生物の試料の分譲を受ける権利を有している場合において、その公表がまだ行われていないときは、証明書には、その権利を有する旨を明瞭に記載し、かつ、慣行に従つて引用することにより当該法令の関係規定(判決を含む。)を表示する。
(b) 工業所有権庁は、自己が与えかつ公表した特許に係る微生物の寄託について国際寄託当局が付した受託番号を表の形式で当該国際寄託当局に随時通知することができる。通知を受けた国際寄託当局は、通知に係る微生物の試料の分譲の請求を行つた当局、自然人又は法人(以下「請求する当事者」という。)に対し、当該微生物の試料を分譲する。受託番号を通知した工業所有権庁は、寄託された微生物で通知に係るものについては、(a)に規定する証明を行うことを要しない。
11.4共通規則
(a) 11.1から11.3〔試料の分譲〕までの規定による請求書、宣言書、証明書又は通知書は、次の言語により作成する。
(@)
 英語、フランス語、ロシア語又はスペイン語を使用している国際寄託当局にあてられるこれらの文書については、それぞれ、英語、フランス語、ロシア語又はスペイン語。ただし、ロシア語又はスペイン語を使用している国際寄託当局に対しては、英語又はフランス語でこれらの文書を提出することができる。この場合において、11.1から11.3までの規定による関係者又は当該国際寄託当局の要請があつたときは、国際事務局は、無料で、ロシア語又はスペイン語による翻訳文を速やかに作成し、これについて認証する。
(A)
 (@)の規定に従つて提出される文書以外の文書については、英語又はフランス語。ただし、その文書があてられる国際寄託当局の使用している一の言語によることもできる。
(b) (a)の規定にかかわらず、ロシア語又はスペイン語を公用語とする工業所有権庁が11.1の請求を行う場合には、当該工業所有権庁は、請求書をロシア語又はスペイン語により作成することができる。この場合において、当該工業所有権庁又は当該請求書を受領した国際寄託当局の要請があつたときは、国際事務局は、無料で、英語又はフランス語による翻訳文を速やかに作成し、これについて認証する。
(修正、昭五六外務告八五)
(c) 11.1から11.3までの規定による請求書、宣言書、証明書又は通知書には、署名し、日付を付する。
(d) 11.1から11.3(a)までの規定による請求書、宣言書又は証明書には、次の事項を記載する。
(@)
 請求を行う工業所有権庁、承諾を得た当事者又は証明された当事者の氏名又は名称及びあて名
(A)
 寄託について付された受託番号
(B)
 11.1の規定による宣言書及び請求書には、寄託に係る出願又は特許の日付及び番号
(C)
 11.3(a)の規定による請求書及び証明書には、(B)に規定する事項並びに11.3(a)に規定する証明を行つた工業所有権庁の名称及びあて名
(e) 11.3(b)の規定による請求書には、次の事項を記載する。
(@)
 請求する当事者の氏名又は名称及びあて名
(A)
 寄託について付された受託番号
(f) 分譲される試料が収められる容器には、国際寄託当局が寄託について付した受託番号を表示するものとし、第七規則に規定する受託証の写し並びに健康又は環境に対し害を及ぼし又は及ぼすおそれのある微生物の性質並びに、請求があつたときは、国際寄託当局が微生物の培養及び保管に用いた条件を記載した文書を添付する。
(修正、昭五六外務告八五)
(g) 分譲の請求を行つた者(寄託者を除く。)に対し試料を分譲した国際寄託当局は、試料を分譲した旨を、また、その日付並びに試料の分譲を受けた工業所有権庁、承諾を得た当事者、証明された当事者又は請求する当事者の氏名又は名称及びあて名を書面で速やかに寄託者に通知する。通知書には、請求書の写し、請求に当たり11.1又は11.2(A)の規定により提出された宣言書の写し並びに11.3の様式による請求書及び証明書の写し又は請求する当事者の署名のある請求書の写しを添付する。
(h) 11.1の規定による試料の分譲は、無料で行う。11.2又は11.3の規定により試料の分譲を請求する場合には、12.1(a)(C)〔試料の分譲手数料〕の規定により課する手数料は、寄託者、承諾を得た当事者、証明された当事者又は請求する当事者が請求に先立つて又は請求の時に支払う。
11.5国際出願に適用する場合の11.1及び11.3の規定の変更
 特許協力条約による国際出願として出願がされた場合には、11.1(@)及び11.3(a)(@)における工業所有権庁にされた出願への言及は、当該工業所有権庁が特許協力条約に定義する意味における「指定官庁」である締約国の指定への言及とみなすものとし、また、11.3(a)(A)の規定により要求される公表についての証明は、当該工業所有権庁の選択により、特許協力条約に基づく国際公開についての証明又は当該工業所有権庁による公表についての証明のいずれかとする。(追加、昭五六外務告八五)